はじめての低FODMAPシリーズ
- 帆秋 慎太郎(Monash低FODMAP栄養士コース修了)
2022.07.19 22:04
IBS(過敏性腸症候群)ってなに?(はじめての低FODMAPシリーズ②)
(このページの更新日:2022年8月9日)

前回の記事ではIBSの概要や症状チェックの注意点について触れました。
この記事ではIBS(過敏性腸症候群)の診断基準とタイプ分類、FODMAPについて解説します。
IBSの診断基準
このページでは IBS(過敏性腸症候群)について先生に聞いてみます。

こんにちは。
消化器内科医の 蝶緒守(ちょうおまもる)と 言います。
専門分野は消化器官疾患です。
先生〜、わたしってそのIBSっていう病気なんでしょうか?
病院で診断をうけるのが一番ですが、以下の基準をみたすとIBSの可能性がたかいと言われていますよ。


(ページ下部の参考文献①、②を元に当サイトが作成)
IBSの診断基準について
上記の基準は2016年に改訂された国際的な診断基準を元にしています。
IBSの症状のひとつである「おなかの不快感」は曖昧なため、この基準には入っていません。
また、平均して1週間に1日以上という高頻度のものが病的とされています。
日本における実際の診断では「腹痛・腹部不快感を伴う便通異常(下痢や便秘)が1か月に2回異常繰り返す」という基準が用いられる場合もあるとされています。
総合的には、「1ヶ月に複数回または3日以上、腹痛・腹部不快感を伴う便通異常がある場合はIBSの可能性がある」と考えて良いとする見方もあります。

毎週じゃない気もするけど、おおむね当てはまります!
わたし困ってるんです。
便秘や下痢になったり、周りに人がいるのにおならが止まらなかったり。
IBSには以下のような4つのタイプがあります。いっしょに見てみましょう。
IBSの4つの分類型




(ページ下部の参考文献①、③、④を元に当サイトが作成)

あなたは「④分類不能型」かもしれませんね。
本当ですね。わたしの症状に近いです。治療はできるんですか?
治療には
①食事指導と生活習慣の改善
②簡易精神療法
③精神療法 の段階があります。
また、小腸で吸収されにくい 糖質を控える食事療法がオーストラリアで開発され、近年有効とされてきています。
その食事療法は Low-FODMAP Diet (低FODMAPダイエット)って言われています。
FODMAP(フォドマップ)とは
小腸で吸収されにくい発酵性の糖質の総称で、以下の言葉の頭文字をつなげてできた言葉です。
Fermentable(発酵性の)
Oligosaccharides(オリゴ糖)
Disacharides(二糖類)
Monosaccharides(単糖類)
And
Polyols (糖アルコール)
健康な人では問題になりませんが、IBSの人では症状の引き金になることがあります。
詳しくは2つ先の記事「FODMAPを知って食生活を考えよう」で解説します。
このサイトでは主にその低FODMAPダイエットに焦点を当てているよ。

IBSの傾向と低FODMAPダイエットの現状
IBSの根本的な原因は特定されていませんが、以下のようなことが分かっています。
- 感染性腸炎にかかった人の約1割が発症する
- ストレスと関連する
- 症状が重くなるほど心の病気とも関連する
- 遺伝が関与する
これらとは別に、食品の中の「小腸で吸収されにくい糖質」が症状を引き起こす引き金になると考えるのが低FODMAPダイエットの基本になっています。
欧米では低FODMAPダイエットがIBSに有効とされる研究が多数ありますが、日本では国内の臨床データがまだ十分ではなく、受け入れやすさや有効性についてはさらなる研究が必要とされています。
以下は低FODMAPダイエットとは異なる研究において、IBSの症状を促進させる可能性があるとされている食品等です。
おなかの調子が悪い人はこれらを控えるのも選択肢の一つです。
- 脂質
- カフェイン
- 赤唐辛子(カプサイシン)
- 牛乳や乳製品
低FODMAPダイエットで控えるべき食品については次の記事以降でご紹介していきます。

食事療法かぁ〜。
ちゃんと生活の中でも 取り入れていけるのかな?
すでに取り組んで改善している人もたくさんいるよ!
これも先生にくわしく教えてもらいましょう!
※本記事の内容は実際の診断結果を保証したり、その代わりとなったりするものではありません。腹痛や下痢・便秘の症状は大腸がんや潰瘍性大腸炎、クローン病など他の病気の可能性もあるので、正式な診断については専門医を受診するようにして下さい。
参考文献
①日本消化器病学会、『機能性消化管疾患診療ガイドライン2020ー過敏性腸症候群(IBS)(改定第2版)』、2020年、ⅹⅶ、ⅹⅸ、ⅹⅹ-ⅹⅹⅱ、9-18、24-25
②鳥居明、『図解 よくわかる 過敏性腸症候群で悩まない本』、2020年、株式会社日東書院本社、56-59
③伊藤克人、『いちばんわかりやすい過敏性腸症候群』、株式会社河出書房新社、2020年、30-57
④江田証、『自分で治す過敏性腸症候群の本』、株式会社宝島社、2017年、14-15

このページの監修者
塩田 純也
長崎大学病院消化器内科 助教
大分県出身、大分大学医学部を卒業。
2014年長崎大学消化器内科に入局。
2017年アメリカミシガン大学へ留学し基礎研究に従事する。
2020年に帰国、長崎大学病院で炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)を専門とし、幅広く診療を行っている。
炎症性腸疾患患者さんが家庭で実践できる栄養療法について、医師・薬剤師・栄養士と多職種で連携し、患者さんに寄り添った診療を目標に日々奮闘中。
この記事を書いた人

-
東洋物産株式会社 丸寿産業株式会社 代表取締役社長
大分県で卵・業務用食品の卸売業を営む会社の3代目。
2020年、自身がIBSであることをきっかけに低FODMAPに関する事業準備を開始。
2022年、低FODMAPに関する情報サイト『みんなの低FODMAPひろば』を立ち上げ。
同2022年、おなかを気づかう人のためのスイーツブランド『LOFOMA+(ロフォマプラス)』の展開をスタート。