はじめての低FODMAPシリーズ

帆秋 慎太郎(Monash低FODMAP栄養士コース修了)
2022.07.19 22:04

FODMAPを知って食生活を考えよう(はじめての低FODMAPシリーズ⑤)

(このページの更新日:2023年3月30日)

「FODMAPと食生活」の画像です

この記事ではFODMAPの詳細とIBS(過敏性腸症候群)への向き合い方について解説します。

FODMAPとは

こちらは FODMAP(フォドマップ)について詳しくご案内するページです。

実際に低FODMAPダイエットをするにはFODMAPが何かわかっていないと難しいですよね?

実践するには医師の食事指導を受けるのが確実ですが、自分でFODMAPを理解することも大事ですね。

聞いてみたいです!
FODMAPがもっとわかれば生活の中で応用もできますよね?

良い視点ですね。
言葉の意味をくわしく知って理解を深めていきましょう。

「FODMAPとは」の画像です

(ページ下部の参考文献①、②、③を元に当サイトが作成)


FODMAP

吸収されにくい発酵性の糖質

FODMAPとはIBSの人のおなかの不調を引き起こす、腸で吸収されにくい発酵性の糖質の総称です。

次の4種類の糖質①オリゴ糖類(O)、②二糖類(D)、③単糖類(M)、④ポリオール(P)のそれぞれ頭文字を並べ、Fermentable(発酵性の)という形容詞を先頭に付けてできている言葉です。

これらの糖類に属するすべての種類がIBSの引き金となるわけではありません。

例えばオリゴ糖類ではガラクトオリゴ糖とフルクタンという2種類の糖質が主に高FODMAPとされています。また、吸収できる度合いも人によって異なります。

FODMAPによって全ての人がIBSの症状を起こすわけではありませんが、繊細な腸を持つIBSの人にとってはFODMAPの吸収不全がおなかの不調や痛みにつながることがあります。

以下特徴を見ていきましょう。

F(Fermentable)「発酵性の」

FODMAPのF(Fermentable)は「発酵性の」という意味ですが、糖質の性質を指す意味合いで使われています。

発酵食品全てが高FODMAPという意味ではありません。

日本の代表的な発酵調味料である醤油味噌低FODMAPとされており、醤油は1食あたり42g、味噌は1食あたり12gまでは低FODMAPなことが確認されています。

ただし、一般的におなかに良いとされる発酵食品の納豆ヨーグルトキムチ高FODMAPなので注意しましょう。

以下、それぞれの糖質の特徴などを記します。

O オリゴ糖 (ガラクトオリゴ糖、フルクタン)

【特徴】・難消化性で小腸で消化・吸収できない
【働き】・健康な人では大腸内の善玉菌のエサになる
・IBSの人ではガス発生などの元になる
【多く含んでいるもの】大豆や納豆など豆類(ガラクトオリゴ糖)
・パンやパスタなどの小麦粉製品全般(フルクタン)
玉ねぎニンニクが特に避けるべき高FODMAP

D 二糖類(乳糖=ラクトース)

【特徴】・乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)がうまく働かない人には吸収しにくい
・日本人の7割が乳糖を消化・吸収しにくい乳糖不耐症と言われている
※IBSと乳糖不耐症は異なる症状
【働き】・吸収しやすい人では善玉菌を増やす働きや抗肥満作用などが期待できる
・吸収しにくい人ではおなかのゴロゴロ感、ガスの発生、腹痛や下痢などの症状につながる
【多く含んでいるもの】  牛乳ヨーグルトなどの動物性乳製品

M 単糖類(果糖=フルクトース)

【特徴】
・多くの果物に含まれているブドウ糖(グルコース)よりも量が多い場合に吸収が遅くなる

[例]
①マンゴー(100g)の場合
 果糖2g>ブドウ糖1.5g → 果糖の方が多いので問題あり
②キウィ(100g)の場合
 果糖4g=ブドウ糖4g → ブドウ糖より多くないので問題なし

※ブドウ糖とのバランスが取れていてもとり過ぎると腸の負担になるので注意
【働き】・ブドウ糖より血糖値が上がりづらい
・IBSの人では下痢などの症状を引き起こす
【多く含んでいるもの】  ・果物や野菜(りんごアスパラガスなど)
・はちみつ
・果糖ブドウ糖液糖(コーンシロップなどに含まれている)
ブドウ糖果糖液糖問題なし(ブドウ糖が多いので)

P ポリオール=糖アルコール (ソルビトール、キシリトールなど)

【特徴】・糖の分子とアルコールが結びついたもの
・小腸での吸収が悪い
・語尾が「ール」で終わるものが多い
【働き】・保湿剤としての働きや歯に良い甘味料
・IBSの人では下痢や腹痛の原因になる
【多く含んでいるもの】   きのこ類
・果物や野菜(りんごさやえんどうなど)
・キシリトールシュガーフリーのガム
※タブレットパッケージに「食べ過ぎるとおなかがゆるくなることがあります」と記載されているもの

糖質の分類ごとで食品の特徴も分かれているので覚えやすいですね!

でも日常生活の中でちゃんと実践していけるか心配です。
まだ知ったばかりなので…。

最初は誰でも不安になってしまいます。でも悲観する必要はありません。

FODMAPを知り、自分の腸の性格をよく理解することで今までよりも健やかな生活を 送れると思います。

このサイトでは低FODMAPになるように構成したレシピも公開しているよ。
そこで好きな料理を探すのも良いかも!

それは嬉しいです!
献立を考えるのが大変って思ってたんですよ〜!

本格的な治療をする前に、いまの食習慣を見なおすことが症状改善への第一歩です。

まずは気持ちの面で不安にならないようにしましょう。

IBSと向き合うために

IBSの症状はFODMAPが引き金となることがありますが、生活上の他の要素とも関連があります。

その一つにストレスがあげられます。

脳で感じた過度なストレスが自律神経を介して腸の運動異常を起こすことがあります。

また、腸からの感覚が神経を通って脳に伝わった時に、脳が大きなストレスを感じている場合は知覚過敏になり腹痛が起こることがあります。

(このような脳と腸が神経でつながっていて影響し合っている関係を脳腸相関と言います。)

繊細な腸を持っている人は、食事だけでなく以下のように生活習慣を見直すことも改善の一助になると言われています。

  • 目覚めの良い睡眠をとる
  • 簡単な日記をつける
  • 規則正しく食事を取る
  • 暴飲暴食や早食いをしない
  • 下痢や便秘の元になるような食材に気を配る
  • 規則正しくトイレに行く
  • 適度な運動を楽しく行う

また、気をつけるべきなのが低FODMAPダイエットがストレスにならないようにすることです。

「高FODMAPを食べてはいけない」、「IBSだから好きなものが食べられない」などと思い詰めるとそれがストレスになり、かえって症状を悪化させかねません。

IBSになったからといって全ての高FODMAP食品を食べてはいけないわけではありませんし、適量な範囲であれば食べてよい高FODMAP食品もあります。

低FODMAPダイエットを通して自分に合わない糖質を知り、食事に活かすことができるようになれば、おなかの悩みから解放された素敵な生活が幕を開けます!

注意すべきこととして、低FODMAPダイエットは医師や専門家のサポート無しで始めるには難易度が高いというような側面もあります。

こちらに関しては代替案を提唱している専門家もいます。

  • FODMAPの糖質のうち1つを選んで3週間ずつ控える方法(参考文献①)
  • 最初に1週間だけ低FODMAPダイエットを実践し、症状が改善するかを見る方法(参考文献④)

(上記は、自分が低FODMAPが有効なIBSの持ち主かどうかを先ず調べるという試みです)

  • 自分が頻繁に食べる高FODMAP食品を1つずつ控える方法(参考文献⑥)

まずは出来るところから、日常生活の中で部分的に活用できるヒントもたくさんあります。生活習慣や食習慣を見直し気持ちを前向きにして、おなかの調子を良くして行きましょう。

ありがとうございます!
お料理するのは好きなのでレパートリーを増やす気持ちで試してみます。

事務局にレシピの希望を出すこともできますよ。
好きな料理がなかったら リクエストしてみよう!

このサイトを見てくれたひとの腸のおなやみが少しでも軽くなるよう願っています!

「次のページへ」の画像です

参考文献

①江田証、『腸を治す食事術』、株式会社新星出版社、2020年、40-43 , 118-121

②江田証、『自分で治す過敏性腸症候群の本』、株式会社宝島社、2017年、22

③Sue Shepherd and Peter Gibson , “THE COMPLETE Low-FODMAP Diet” , 2013 , The Experiment ,  28-35

④Kate Scaralata and Dede Wilson , “The LOW-FODMAP DIET Step by Step” , 2017 ,  Da Capo lifelong ,  6-8 , 37-38

⑤鳥居明、『図解 よくわかる 過敏性腸症候群で悩まない本』、2020年、株式会社日東書院本社、32-39,108-116

⑥Patsy Catsos MS. RD. ,  “IBS Elimination Diet and Cookbook: The Proven Low-FODMAP Plan for Eating Well and Feeling Great” , 2017 , Harmony , 155-158


このページの監修者

塩田 純也

長崎大学病院消化器内科 助教

大分県出身、大分大学医学部を卒業。

2014年長崎大学消化器内科に入局。

2017年アメリカミシガン大学へ留学し基礎研究に従事する。

2020年に帰国、長崎大学病院で炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)を専門とし、幅広く診療を行っている。

炎症性腸疾患患者さんが家庭で実践できる栄養療法について、医師・薬剤師・栄養士と多職種で連携し、患者さんに寄り添った診療を目標に日々奮闘中。

この記事を書いた人

帆秋 慎太郎(Monash低FODMAP栄養士コース修了)
帆秋 慎太郎(Monash低FODMAP栄養士コース修了)
東洋物産株式会社 丸寿産業株式会社 代表取締役社長

大分県で卵・業務用食品の卸売業を営む会社の3代目。
2020年、自身がIBSであることをきっかけに低FODMAPに関する事業準備を開始。
2022年、低FODMAPに関する情報サイト『みんなの低FODMAPひろば』を立ち上げ。
同2022年、おなかを気づかう人のためのスイーツブランド『LOFOMA+(ロフォマプラス)』の展開をスタート。
  • 運営チームの紹介
  • 大切にしたいこと
  • 運営会社について
  • 運営チームの紹介
  • 大切にしたいこと
  • 運営会社について