公開記事
- 帆秋 慎太郎(Monash低FODMAP栄養士コース修了)
2022.12.12 13:00
過敏性腸症候群(IBS)の食事療法の一つ、低FODMAPを解説!
(このページの更新日:2022年12月12日)

低FODMAP(フォドマップ)とは、主に過敏性腸症候群(IBS)の治療に用いられる食事療法の基礎となる概念で、近年注目が高まっています。
過敏性腸症候群(IBS)などに悩み、現在の食生活を変えたいと考えている人は決して珍しくありません。
そんな場合には腸に優しい食事療法の1つとして、「低FODMAP(フォドマップ)」による食事法が推奨されることがあります。
この記事では、低FODMAPによる食事法の基本や特徴、注意点を解説します。
健康のために食事を見直してみたいと考えている方は、ぜひ日々の食事に取り入れてみてください。
目次
低FODMAP(フォドマップ)による食事法
=低FODMAPダイエットとは?

低FODMAPによる食事法(以下「低FODMAPダイエット」)とは、近年注目されている腸に優しい食事法です。
海外では、低FODMAPによる食事法の研究が進んでおり、民間の製品やサービスも数多く誕生しています。
例えばニューヨークでは、低FODMAPの料理を温めるだけで食べられるレディーミールとして配送してくれるサービスが誕生するなど、日常生活への浸透が進んでいます。
以下では、低FODMAPダイエットによる食事法の基本的な概要について解説します。
過敏性腸症候群(IBS)における食事療法の1つ
低FODMAPダイエットとは、過敏性腸症候群(IBS)の治療に用いられる食事療法を指します。
過敏性腸症候群とは、腸の中に明らかな病気(炎症や癌など)が無いにもかかわらず、慢性的にお腹の具合が悪くなったり、便秘や下痢などの症状が3ヶ月以上継続する病気のことです。
参考までに2016年版の診断基準を下に示します。
IBS(過敏性腸症候群)ってなに?の記事でも解説していますので、併せてご覧ください。
IBSの診断基準(ローマⅣ基準)
■腹痛が
■最近 3 ヵ月のなかの 1 週間につき少なくとも 1 日以上を占め
■下記の 2 項目以上の特徴を示す
(1)排便に関連する
(2)排便頻度の変化に関連する
(3)便形状(外観)の変化に関連する
※最近 3 ヵ月間は基準を満たす
※少なくとも診断の 6 ヵ月以上前に症状が出現
過敏性腸症候群などの消化器官系の疾患に悩む人は多く、日常生活に影響が出てしまうケースも少なくありません。
日本消化器病学会ガイドラインによると、10人に1人が過敏性腸症候群の症状を有するとされています。
参考:過敏性腸症候群(IBS)ガイド|患者さんとご家族のためのガイド|日本消化器病学会ガイドライン

過敏性腸症候群は命に関わる病気ではありませんが、お腹の調子が気になって毎日を楽しめなかったり、遠出の際に不安を感じたりといった、精神的な負担につながることが多いです。
そんな過敏性腸症候群の症状を解消する新しい方法の1つとして、低FODMAPダイエットに期待が集まっています。
※「ダイエット」は食事療法という意味で用いており、痩身や減量を目的とした食事法ではありません。
低FODMAPダイエットはオーストラリアのモナッシュ大学が発表したもので、過敏性腸症候群(IBS)の4人に3人の割合で効果が期待できるとされています。
低FODMAPダイエットの実践方法
低FODMAPダイエットの効果を取り入れるには、日常の食事を大きく変える必要があります。
以下では、低FODMAPダイエットの実践方法を紹介します。

FODMAPとは
低FODMAPダイエットを始める前に、FODMAPについて知りましょう。
低FODMAPの「FODMAP」とは、過敏性腸症候群(IBS)の症状を引き起こす成分を指しています。
具体的には「小腸で吸収されにくい発酵性糖質」である、以下の成分を含む食事・食品がFODMAPに該当します。
F(Fermentable:発酵性の) | 下記に挙げる発酵性の糖質を指している |
O(Oligosaccharides:オリゴ糖) | ガラクトオリゴ糖、フルクタン |
D(Disaccharides:二糖類) | 乳糖(ラクトース) |
M(Monosaccharides:単糖類) | 果糖(フルクトース) |
P (Polyols:糖アルコール) | マンニトール、ソルビトール、キシリトールなど |
上記成分の頭文字を取って「FODMAP(フォドマップ)」と呼ばれます。
これらの成分が入っている食事を避けることが、低FODMAPダイエットの基本です。
まずは過敏性腸症候群の原因になり得るFODMAPの内容を、チェックすることからはじめてみましょう。
高FODMAP食品を把握する
低FODMAPダイエットを実践するには、上記で紹介したFODMAPの成分を多く含む食品を確認し、それを避けた食事を取ることがポイントです。
例えば以下の種類の食品には、FODMAPに該当する成分が高いため注意しましょう。
FODMAPの成分 | 成分が多く含まれる食品 |
---|---|
【O】ガラクトオリゴ糖 | 納豆、絹ごし豆腐 など |
【O】フルクタン | 小麦、たまねぎ など |
【D】乳糖(ラクトース) | 牛乳、ヨーグルト、アイスクリームといった動物性乳製品 |
【M】果糖(フルクトース) | 果物や野菜(りんご、アスパラガス など)や蜂蜜 など |
【P】マンニトール | キノコ類、カリフラワー、さやえんどう など |
【P】ソルビトール | りんご、なし、プラム など |
【P】キシリトール | シュガーレスのお菓子 など |
一般的に上記の食品は、体や腸に良いと言われているものばかりです。しかし、過敏性腸症候群の人が摂取すると腹痛や下痢などの症状を引き起こすケース等があります。
そのためFODMAPを含む食品をピックアップし、日常の食事から取り除くことが、低FODMAPダイエットの基本になります。
【初期】FODMAPを制限する
低FODMAPダイエットをはじめる際には、まず上記で紹介した高FODMAP食品を取り除いたメニューに徐々に移行し、2~6週間ほど制限を続けます。
低FODMAPダイエットの実践中は常に体調に問題がないことを確認し、些細な変化も見逃さないようにしましょう。
FODMAPの高い食品を制限しても変わらず体調が悪い場合には、FODMAP以外のことが過敏性腸症候群の原因になっていると考えられます。
その際は医療機関を受診し、相談してみましょう。
【中期】FODMAPを少量ずつ取り入れる
2~6週間程度かけて低FODMAPダイエットを継続したら、制限していたFODMAPの食品を少しずつ(1食品ずつ)日々の食事に取り入れます。
FODMAPが高い食事を摂っても過敏性腸症候群の症状が出ない場合には、その食品を食べても問題ないと判断できます。
逆にこれまで安定していた体調が崩れた場合には、その食品に含まれるFODMAPの成分が自分の体に合っていないと考えられます。
【後期】自分に合った食生活へ
チェック工程で自分に合わないと特定した高FODMAP食品を避け、自分に合うFODMAPを取り入れます。
低FODMAPダイエットずっと続けるのではなく、食べられるFODMAP食品を確保し栄養バランスの良い食生活にしていくことがポイントです。
(詳しく知りたい方は不調が起こる流れと低FODMAPダイエットのステップの記事もご覧ください。)
低FODMAPダイエットを行う際の注意点

低FODMAPダイエットを実践する前に、以下の注意点を確認しておきましょう。
摂取する栄養が偏らないように注意する
FODMAPを含む食品は栄養価が高く、制限しすぎると栄養が偏るリスクがあります。
低FODMAPの食事を意識しすぎるあまり、栄養の偏りによる体調不良を引き起こさないように注意しなければなりません。
最初は徐々にFODMAPを含む食品を減らすことを意識するとともに、医師や栄養士と相談しながら体調の変化を確認していくことがポイントです。
調理・製造方法次第でFODMAPのバランスは変化する
同じ食材を摂取する場合でも、調理・製造方法が変わるとFODMAPの量も変化する点に注意が必要です。
例えば豆腐に含まれるFODMAPは液体に溶ける性質があり、絹豆腐に力をかけて水分を抜いた木綿豆腐はFODMAPが低いと言われています。
低FODMAPのための調理・製造方法を把握することも、効果を引き出すためには大切な準備となります。
「みんなの低FODMAPひろば」では、低FODMAPのレシピを多数公開しているため、ぜひ低FODMAPのレシピからチェックしてみてください。
低FODMAPダイエットのメリット/デメリット
低FODMAPダイエットには、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メンタルに良い影響がある

低FODMAPダイエットによって過敏性腸症候群の不調が軽減されれば、メンタルにも良い効果があると期待できます。
過敏性腸症候群によって精神的に負担を感じている場合には、メンタル面に良い影響を与えられるよう低FODMAPダイエットを実践してみることをおすすめします。
メンタルの安定は生活しやすい環境を作り、低FODMAPダイエットを継続するモチベーションにもなるでしょう。
長期的に行う必要がある
低FODMAPダイエットは、短期間で効果が出るわけではありません。
なぜなら高FODMAPな食品の摂取量を2〜6週間かけて減らしたのち、さらに6〜8週間かけて制限していた食品を復活させていく工程が必要だからです。
長期的な低FODMAPダイエットの最中に体調不良などのトラブルが起きることも想定して、事前に主治医や栄養士に不安なことを相談しておくとよいでしょう。
実践中は気軽に外食できなくなるかもしれない
低FODMAPダイエット中は多くの食品が制限されるため、気軽に外食ができなくなる点もデメリットです。
外食が日常になっている人にとっては、ストレスの原因になってしまうかもしれません。
低FODMAPダイエット中でも問題ない自炊メニューのバリエーションを増やせるように、ぜひみんなの低FODMAPひろばで低FODMAPのレシピを参考にしてみてください。
まとめ

低FODMAPダイエットは、過敏性腸症候群の悩みを解決したり、それにより生活の質(QOL)の向上に繋がることが期待できます。
基本となる低FODMAPダイエットの概要と方法を確認し、日々の食生活の見直しを行ってみてはいかがでしょうか。
みんなの低FODMAPひろばでは、医師や栄養士の監修の下で正しい知識と低FODMAPのレシピを公開しています。
会員同士が気軽に情報を共有してコミュニケーションを取ることもでき、同じ悩みを持つ人たちと励まし合って低FODMAPダイエットを実践し続けることが可能です。
みんなの低FODMAPひろばで低FODMAPの特徴や魅力的なレシピをチェックして、生活に上手に取り入れましょう。

このページの監修者
塩田 純也
長崎大学病院消化器内科 助教
大分県出身、大分大学医学部を卒業。
2014年長崎大学消化器内科に入局。
2017年アメリカミシガン大学へ留学し基礎研究に従事する。
2020年に帰国、長崎大学病院で炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)を専門とし、幅広く診療を行っている。
炎症性腸疾患患者さんが家庭で実践できる栄養療法について、医師・薬剤師・栄養士と多職種で連携し、患者さんに寄り添った診療を目標に日々奮闘中。
この記事を書いた人

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東洋物産株式会社 丸寿産業株式会社 代表取締役社長
大分県で卵・業務用食品の卸売業を営む会社の3代目。
2020年、自身がIBSであることをきっかけに低FODMAPに関する事業準備を開始。
2022年、低FODMAPに関する情報サイト『みんなの低FODMAPひろば』を立ち上げ。
同2022年、おなかを気づかう人のためのスイーツブランド『LOFOMA+(ロフォマプラス)』の展開をスタート。